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vol.09 高額品を扱う業者さん限定! 【分記法】

商品売買は、会社やお店のメインとなる活動です。今回はその会計処理の方法について考えてみましょう。3分法や分記法、売上原価対立法や総記法などなど、ポイントは正確な利益をどのタイミングで把握できるか?です。そこらへんを解説いたします。

座標やベクトル、面積の計算…なーんて話しは出てきません。
足し算、引き算(あと掛け算、割り算もちょっとだけ)ができれば大丈夫の簿記3級。気軽な気持ちで読んでくれたらうれしいです。3時のおやつ、ティータイムのお供にでも、どうぞ。

 

仕入って本当に費用でいいの?

これまで商品売買ということで、次のような仕訳をしてきました。

商品を仕入れた時

商品を 1,000円で仕入れ、現金で支払った。
借方 金額 貸方 金額
仕入 1,000 現金 1,000

 

商品を売上げた時

1,000円の商品を販売し、現金 1,000円を受取った。
借方 金額 貸方 金額
現金 1,000 売上 1,000

 

これは、「3分法(さんぶんぽう)」というやり方です。
スーパーマーケットや、飲食店、家電量販店など、日々、「仕入れて売って」をたくさん行うスタイルの商売に向いているやり方です。

他にも、「売上原価対立法(うりあげげんかたいりつほう)」、「分記法(ぶんきほう)」、「総記法(そうきほう)」などなど、いくつかやり方があります。

簿記3級では、「3分法(さんぶんぽう)」と「分記法(ぶんきほう)」が範囲に入っています。
他のやり方は、将来のお楽しみにとっておくとして、このサイトでは簿記3級の範囲であるもうひとつのやり方「分記法(ぶんきほう)」について次の見出しのブロックで紹介します。

 

…と、そのまえに。

いろんなやり方があって、何が違うのか?ということについてちょっとだけご説明します。ざっくりいうと「正確な利益額をどのタイミングで把握するのか?」という違いです。

利益は「収益 – 費用」の計算式で求めることができます。
さて、この「費用」、これまでの3分法のやり方では買った時に買った金額をそのまま「仕入」として「費用」の残高を増加させてきました。本当にそれで良いのか?という話しが出てくるんです。

買ったものが費用なのか?資産なのか? 区別のしかたを覚えていますか?

・収益を生み出すため、既に役目を果たしてくれたものは「費用」
・収益を生み出すため、これから役にたってくれるもの「資産」

既に役目を果たしたのか、これから果たすのか?」の違いでした。

「儲け = 売上 – 費用」です。資産は儲けに影響を与えません。つまり買ったものが費用か資産かによって、利益の金額が変わってしまいます。ということで、どちらなのかがとても重要になってきます。

これは「Matching Concept(マッチングコンセプト)」という会計の基本的な考え方に基づいています。収益と費用は常にマッチングさせておき、その年に売れたもののために使った分だけを費用にして、その他は資産として扱いましょう! というものです。
その年にいくら儲けたのか?を正確に把握することが目的のコンセプトです。

60円で仕入れた商品を、100円で売ったら儲けは40円です。
今年仕入れて、今年中に売れればその通りです。

では、昨年に仕入れたものが、今年に売れたらどうでしょう?
「商品が売れた! 今年は仕入がなかったから100円も儲かったぁ!」とはならないですよね。やっぱり儲けは40円です。その商品を売ることに対する儲けがいくらなのか?をしっかり把握したいのです。

さぁ、これまで買った時に買った金額を「仕入(費用)」にしてきたことについて考えてみましょう。
仕入れた商品は、売ってはじめてそのお役目を果たします。買ったタイミングでは「これから役にたってくれるもの」であるはずです。

これから….ってことは当然「資産」なのではないか?と考えますよね。

そうなんです。本当は「資産」にするべきだったんです。

商品を買ったタイミングでは資産として扱っておき、売れたタイミングで費用に切り替えるというのが正しそうですよね。ただ、このやり方では、その商品が売れる度に「それがいくらで仕入れたものか?を調べて、資産から費用に振り替える」という作業が必要になってきます。

日々、「売り買い」をたくさん行っているスタイルの商売をしていると、あれこれ考えるのが大変です。商品が売れたタイミングでは、「それがいくらで仕入れたものなのか?そんなのいちいち覚えていませんよー。」というのが現場で働く方のご意見です。そこで、なんとか処理を簡単にしたいため「仕入れたものはすぐに売ってしまうだろう!」という発想のもと、買ったらそのまま「費用」にするというやり方をしているのです。これなら、売った時は売ったことだけ記録するだけで良いのでとっても楽チンです!

しかし、「これでは費用の金額が正確ではないじゃないか!」という問題が出てきます。。これを解決するために、「決算(けっさん)」という一年最後の締め括りというイベントがあって、その中で正確な費用の金額に訂正する処理を行います。

今、手元には、仕入れた商品がいくら分残っているのか?を集計して、「それらは、来年以降の将来に役目を果たしてくれるでしょう 」ということで、「費用から、差し引いて、資産に振り替える」ということをしています。費用から振り替えられた資産は「繰越商品(くりこししょうひん)」と呼ばれます。

日々の処理の結果では、1,000万円の仕入(費用)でした。売上が1,500万円だとすると、利益は500万円です。(1,500 – 1,000 = 500)

一方、決算処理後の最終的な金額で、仕入(費用)は800万円です。売上1,500万円ですので、利益は700万円に変わります。(1,500 – 800 = 700)
これで、費用の金額が正されて、利益額も正確に把握することができるようになりました。

正確に把握する利益額700万円と、そうでない800万円では、200万円も金額がずれちゃうんですね。

このように「売上」、「仕入」、「繰越商品」と3つの勘定科目に分けて管理することから「3分法」というのでしょう。このやり方では、正確な利益額は決算が終わったタイミングで把握することができるってお話しでした。

(詳しくは「決算」だけにフォーカスした別の投稿をしますので、ぜひ、そちらを読んでいただきたいです。)

 

高額品を扱う業者さん限定! 【分記法】

はい、ここからは商品売買のもうひとつのやり方「分記法(ぶんきほう)」をご紹介いたします。

3分法では、決算が終わるのを待たないと正確な利益額を把握することができませんでした。
それと今、手元にいくら分の商品が売れ残っているのか?も決算の時に集計して初めて把握することができました。

この「分記法」を使えば、決算を待つことなく、日々の処理の中で正確な利益額を把握することができるんです。商品在庫も常にいくら残っているのかを把握することができちゃいます

仕入れた時は「商品」という資産の勘定科目を使い、資産の増加として仕訳をしておきます。
そして販売時に、この商品(資産)を減少させ、販売額との差額を「商品売買損益(しょうひんばいばいそんえき)」という収益の勘定科目を使って仕訳します。

この「商品売買損益」の残高が、そのまま利益額ということになりますので、売れるたびに利益がわかります。また仕入れた商品である資産をその都度、減少させますので、「商品」の残高が、そのまま残っている在庫ということになるのです。常に正確な金額が把握できるので、決算の時に振替などの訂正が不要です。

 

分記法の会計処理

仕入れた時

商品を10,000円で仕入れ、代金は掛けとした。
借方 金額 貸方 金額
商品 10,000 買掛金 10,000

\考え方/

商品を仕入れました。これまでの「3分法」では仕入(費用)としていましたが、「分記法」では商品(資産)として扱います。資産 10,000円の増加です。

代金は掛けということで、買掛金(負債)が10,000円増加します。

資産と負債の両方とも残高が増加しますので、それぞれの要素のホームポジション側に記入します。

 

販売した時

1,0000円で仕入れた商品を、18,000円で販売し、代金は掛けとした。
借方 金額 貸方 金額
売掛金 18,000 商品 10,000
商品売買損益 8,000

\考え方/

1. 商品(資産)を販売したということは、残っていた在庫をお客さまに引き渡し、手元からなくなったということになります。資産が10,000円減少しますので、ホームポジションとは逆側の貸方(右)に記入します。

2. 販売時に掛けとしていますので、売掛金(資産)が販売額18,000円増加します。資産の増加ですので、ホームポジションである借方(左)に記入します。

3. 販売額と仕入額の差が儲けです。勘定科目「商品繰越損益」を使います。この要素は「収益」です。金額は8,000円です。(8,000 = 18,000 – 10,000)
増加していますので、収益のホームポジションである貸方(右)に記入します。

 

このように、販売する都度、その商品の仕入値がいくらだったのかがわかるように、しっかり管理しなければなりません。スーパーマーケットや飲食店、家電量販店といった扱う商品の数が多い場合、管理がとっても難しいんです。(同じ商品でも、買う日によって値段が変わったりもしますし…)。このやり方は向いていないのです。

一方で、宝石屋さんや、自動車屋さんなど、扱う商品の数が少ないスタイルの商売では、それぞれがいくらで仕入れたのかを管理することが割と簡単です。

管理ができるのであれば、分記法の方が、常に利益がいくらで、在庫がいくら残っているのかを把握できるので、とっても便利ですし、決算時の処理がいらなくなりますので、楽チンです!

ということで、高額な商品を少なく扱う業者さんに向いている、特別限定の会計処理「分記法」のご紹介でした。

 


これで長く続いた商品売買のお話しはおしまいです。

次からはお金の種類や小切手や手形など決済方法のいろいろについてです。
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